2013年5月31日金曜日

[Day 31] 解体終了


契約してから31日目。当初の予定より4日延長して物件のスケルトン解体工事が終わった。解体が伸びた主な理由は地下室の換気用ダクトの処置。結局、再利用せずに解体を選んだら、地下の天井、つまり一階の床に大きな穴が空いてしまった。これは二期工事で埋めてもらわないと危険。しかし、皮肉にも陽が入らなかった地下に陽が入るようになり、少し鉱山遺跡のような雰囲気になった。









一つ大きな失敗をした。それは、解体が始まる前に買った掃除道具が粉塵まみれになってしまったこと。一度、家に持って帰るか悩んだが、ホームセンターで蓋付きの大きな箱に入れて、職人さんの「大きなシートをかけておくから大丈夫ですよ」の一言を信じて置いておく判断に。結果、あらゆるものが白く粉まみれになってしまった。無精をせずに持って帰れば良かったと後悔する。結局、掃除道具を掃除する道具を買いに行くはめに。









これから、掃除をし、部分部分で塗りを試してみる予定。空間が白くなるとさらに明るく広く感じれると思う。


その楽しみのために一度埃まみれになろう。








2013年5月28日火曜日

[Day 26] ツタの話


三角形の一辺の外壁は隣の建物から生えてきたツタで覆われている。窓から入る日差しも緑の天然のグリーンカーテンで淡い色に変わる。このツタが絡まった味のある建物にどうも自分は弱いみたいだ。学生時代を過ごした母校もツタに覆われていた。余りに校舎が素晴らしくて、ジャケ買いのように受験をする学校を決めてしまった。結果は世紀の名盤に出会った気分。今でもあの学校に通えたことは自分の中で大きな財産となっている。

しかし、その後、校舎は老朽化のため大部分が立て壊しになってしまった。建物はビルに形を変え、シンボリックだったアーチのみが残されることが決まった。それに関してはしょうがない選択だったと思う。形ある物はいずれ壊れる。何より時代に合った取捨選択をしなければ学校として生き残れない。ただ、後に新校舎を見た時、残されたアーチに覆っていたツタだけはなかった。どうやら、塗装を塗り直す段階で全て切り取られてしまったらしい。あっけなく思い出の校舎ではなくなってしまった。



三角ビルを初めて見た時、どこか懐かしいと感じたのはこの母校の校舎に少し面影を感じたのかもしれない。母校とは違い、こちらは無骨でデザイン性など皆無なのに。







三角ビルはツタに覆われた一辺以外はのっぺらぼうのように窓しかない。しかし、通りに面してるのがその面なのだ。一度、外壁を塗り直すことも考えたが、足場を組むことによるコストの増加や、今覆っているツタを除去をしなければ塗れないことが分かった。せめて、のっぺらぼうの正面だけでも塗ろうかと思ったが、舞台のセットのように正面だけ綺麗で裏に回ると実はハリボテだと嫌だなと思って結局やめてしまった。







こうなったら正面を何も書かれてないキャンパスと捉え、一つのアイデアが浮かぶ。実は母校に生えていたツタは卒業生と先生が切り取られる前に分け、大切に育っていたことが分かった。三角ビルと契約後、友人を頼りその後のツタの行方を調べてもらった。ツタは意外な所で見つかった。







解体を逃れた母校のアーチをツタは少しだけ覆っていた。卒業生が持ち帰り育ってていたツタは一株を残して枯れてしまい、その最後の一株を以前のようにアーチを覆って欲しいとの願いから2年ほど前にもう一度植えられていた。小さな幹だったツタは少しずつ成長をし、部分的だが天井を覆うまでになっていた。



懐かしさを通り越して、もはやサウダージな感覚に。事前にツタを分けてもらう許可を先生方に取り、久しぶり母校を訪れた。やはり、ツタがあの雰囲気を作り出していたんだなと思い嬉しくなった。先生方に現状報告とあいさつをし、育て方のアドバイスと共に一蔓頂いて帰った。








今、我が家で挿し木をしてツタから根が生えるのを待っている。季節によるけど、2週間から1ヶ月ほどで根は生えてくるそう。あののっぺらぼうの一面を覆うのはどれくらいかかるのだろうか、楽しみでしょうがない。


その前にこのツタを枯らさないようにしないと。




2013年5月24日金曜日

[Day 23] スクラップ&ビルド


高所恐怖症の自分は立ち上がりもない塔屋に立つ想像もしたくない。

少し"バクダットカフェ"を思い出すような屋上の高架水槽の撤去が進む。明るい色で塗り直して、建物の新たなサインにしようかと考えたが、ビル風が吹くこの場所に古い水槽はいずれ飛んでいて大変なことになってしまうかもしれない。現在では高架水槽がなくても、圧力で3階〜4階まで水を上げることができるのが分かり撤去を決めた。








解体は予想を超える状態だった。建て増しによる雑な作りが見え始める。地層のように、配達所時代の床を剥がすと一番最初に立てられた当時の床材が出てくる。さらに解体をすると躯体のコンクリートが出てくる。どのような手順で建て増しをしたかが分かり、気分は遺跡調査だ。







一度、コンクリートのハコモノに戻す。中途半端に"使えるかも…"と思って壁面などを残していても結局余分な手間とコストが増すだけ。割り切って取れる物は全て取ってもらう。その潔い決断を出すのがそう簡単ではなかった。心の中ではまたお金がかかってしまうかもと思い、残せるものは残そうとどうしても考えてしまう。









トラブルと前向きで付き合える時はまだ幸せだと思って進むしかない。





2013年5月22日水曜日

[Day 22] ショールーム巡り2



解体工事が進む。この後は二期工事として電気/水道などのライフライン整備へ移る予定だが、その前にマスキングの手間を少しでも省くため、塗れるものは塗ってしまう予定。当初の予定よりDIY期間への移行が早まりそうなことがわかり、慌ててカラーワークスさんのパレットビルに出かける。今、個人的に一番熱いスポット"馬喰町"にある輸入塗料会社。






差し色的に使う壁面を何色にするか楽しく悩みに悩みたいため、カラーチャートをお借りした。1488色という膨大な数のカラーバリエーションを持つ"Hip"は気に入った色の番号を控え、オンラインや来店で注文できるシステム。自分で調合をしないため、色の比率を間違え壁面で濃淡が出来るということがなく、初心者には大助かりで好きな色が簡単に塗れる優れもの。





このパレットビルも築50年近い古ビルをリノベーションした物件。"先輩"を見て少し勇気とアイディアをもらえたような気がした。





その後、フクモリに寄り美味しいご飯を食べながら作戦会議。良いお店は街を変える典型的な例がこの馬喰町だと思う。願わくばあの街も少し違う形に変わると良いな。


2013年5月17日金曜日

[Day 17] 解体


粉塵を舞よわせながら解体工事が始まった。朝、親方にどこを残すかを伝える。どこを壊すか、ではなくどこを生かすのか?という質問に職人気質を感じた。
数名の職人を引き連れて、間仕切りなどがみるみる解体されていく。やはり、プロの仕事。躊躇なく物が形を崩して無くなり、コンクリートの面が出てくる。








お昼を挟んだ頃には、部屋は形を変えて本来持つ広さを見せはじめる。仕切りの壁がなくなり、作り付けの棚もなくなる。図面から引き出した想像より体感的に広く感じた。友人と思わず、前は出来なかった反復横跳びをしてしまったぐらい。3人ぐらいならパス交換も出来そう。そして、壁がなくなったことで、空間全体に陽が入り明るい。








昼過ぎには友人が解体される模様を撮影に来てくれた。開始二日で大物が解体される予定。躯体に戻す事で新たに見えてくる問題もあるだろうけど、これからは空間に引き算ではなく足し算で考えられるのは嬉しく楽しい。











2013年5月15日水曜日

[Day 14] ハコモノ


この不思議なビルは某新聞配達所が最後に入っていた。一階には仕分け用に使ったと思われる作り付けの棚が並び、二階にはお風呂場やキッチン、三階より上は配達員が寝泊まりしていた4畳ほどの小部屋にいくつも仕切られている。

最初、不動産屋さんに物件を見せてもらった時、タコ部屋か独房にしか思えなかった。こんなに陽が入る独房も余りないだろうけど…一体、どんな労働条件だったんだろうと思って少し恐ろしくなった。







配達所の中身で使えるものはほぼないため、まず一旦スケルトン状態に戻す事に。何より一度、それぞれをハコモノにして考えたかった。何十枚コピーされた図面に線を走らせてもイメージは湧かず、実寸で人の流れや物事などを計りたかった。そうなると今仕切られている壁はいらない。


新たなスタートとしては一度まっさらなハコに戻そうと思う。
















2013年5月13日月曜日

[Day 10] 掃除中に思う事


物件の外を掃除しているとどうしても頭の中で、環境犯罪学の一つ"割れ窓理論"を思い浮かべてしまう。長い事人の手が入ってなかったため、空き家か、もしくはそれ以上に廃墟のように思われていたようで、掃除していて信じられないゴミに出くわす。

オリーブオイルの缶、炊飯器の釜、明らかに物件の花壇に植えられている木以外の小枝が寄せ集められたり。誰も怒らないのを良い事に、小さな粗大ゴミが投げ捨てられていて、人のモラルの低下を直接見るようで悲しくなる。






ビルの道を挟んだ向かいには都内有数の高級高層マンションのエントランスがデザインを持って綺麗に構えている。掃除をしていると、方やこちらはまるで見捨てられたような感覚に陥ってしまう。実際、日照は高層マンション郡に遮られ、暗くなったその区間は再開発の波に飲まれる以外の解決法を持たないかのようだ。


ふつふつと怒りに似た感情が少し出てくる。ここを再生させて見返したいと。再開発では出来ないアプローチがあるんだということを。余り普段見せない感情に自分でもびっくりしながら一人小枝を掃いていく。



2013年5月9日木曜日

[Day 6] バルサン・エス・バルサン


本格的な解体工事は来週から。現状で出来る事は意外に少なく、見積もりやらこの後の工期などスケジュールを詰めたり。頭の中でシミュレーションを重ねる段階。ただ、解体が入る前に一つやっておきたいことが、害虫対策。

古いビル
数年人の手が入っていない

っと、こうして書き出すだけで虫対策はやれるだけやった方がいいはず。







お馴染みバルサンを各階に配置。ノンスモークタイプもあるのは有り難い。煙を火事だと誤認され通報されるのはリノベのスタートとして嫌だ。ビル内の窓を全て閉め切り、後はスイッチを押すだけ。一時間閉め切るだけで良いみたいだけど、回収は翌日にした。



説明では2~3週間後にもう一度やるとより一層の効果が出るそうで、解体工事が終わってからもう一回焚こうと思う。念には念。念には念…





2013年5月7日火曜日

[Day 4] パーティー


電気、水道、ガスとライフラインがまだ未整備の中、LEDランタンを取り囲むように皆で細やかながら契約記念パーティー兼決起集会をした。
東京の真ん中だけど、明かりは頼りなくまるでキャンプだ。コンクリートジャングルでのキャンプ。



↑ まずは土ぼこりを掃除


座る椅子はキャンプ用と脚立など。ホームセンターで買った2×4材で作ったソーホースが机代わり。足は完成するも足と足を橋渡しにする板がない。代用として解体予定の物入れの蓋を天板に。サバイバルな環境の中、次々と食べ物とお酒、友人が集まってくる。




↑ ソーホースは立食には丁度良い高さ

↑ 一言あいさつをして乾杯



まともな明かりがないのに、外から中を覗くともう雰囲気が出来ていた。薄暗い中で笑う顔や弾んだ声、薄い膜で覆うように流れる音楽。皆が冗談で「もう完成で良いんじゃない?」と言って笑いあった。
これからここが自分の居場所になる。そう思うとワクワクする。

遅れて"祝!開店"と書かれたケーキを持って、友人が駆けつけてくれた。
さすがにそれは少し気が早いじゃないかなと思いながら、ケーキを切り分けた。









2013年5月5日日曜日

[Day 4] Buy!Buy!Buy!


33回転で進んでいた世の中が急に45回転になったような、今までのピッチでは少し躓きそうになる。

友人に車を一台出してもらい都内では相当大きなホームセンターへ買い出しに。リストを片手に、店内を回るも広さに圧倒されっぱなし。実物を見ると本当にこれが必要なのかとイチイチ考えそうになりながらも、デカいカートに商品を入れていく。刷毛、ローラー、バケツ…今までの人生で縁がなかったものばかり。少し新しい自分と出会えそうで楽しみでもある。

"試してみる"このフレーズが頭の中で反芻している。







買い出しを終え積み荷を下ろす。やはり掃除道具が充実すると嬉しい。汚れた空間が少しずつ綺麗になり、人を受け入れるポテンシャルを持ち始める。



さぁ、掃除が終わったら今日はちょっとしたパーティーだ。




2013年5月2日木曜日

[Day 2] プレ解体


契約後でなければ出来ない事のひとつが解体。

当たり前だけど契約前の調査では勝手に板など剥がすことは出来なかった。一体床面、壁面がどのようになっているか、本格的な解体工事はまだ先だけど、お試しで少し解体をしてみる。


本格的な道具はまだ搬入してないため、ハンマーやドライバーなどを使って床面を抉る。




↑ ドライバーを支点にテコの原理で剥がす

↑ のこぎりで切り開く


床面や壁面など調査をしたところで残念ながら日没サスペンデッド。ただ、床面の板は固く、かなり根太により高さが出ている事がわかった。しかし、基礎のアスファルトは特に糊などは塗っておらず、綺麗な面が出てきそう。


逆に階段はカーペットの糊がべったりとくっ付いていてこれを綺麗に削るのは難しそう。

これは何か対策を考えないといけない。


プロに頼むこととDIYできることの見極め。

クオリティとスピード、お金とで頭の中の天秤は常に揺れているイメージが続く。




2013年5月1日水曜日

[Day 1] 契約日


契約をしてきた。

判子を工場にあるプレス機のように大量に押した。

再開発の波に飲まれそうな古く小さなビル。

建物の形を表現して「三角ビル」と名付けた。

契約まで無事に事が進むのか不安だったが、なんとかここまで来た。

ゴールに辿り着いた気分だけど、着いた場所はまだスタートライン。


いよいよ始まる。
契約が全て終わり鍵を渡された時、今まで不動産屋さんが立ち会わないと入れなかった空間に自由に入れると思うと急に実感が湧いてきた。


ひとまず、共に始める仲間とささやかながら祝いをしよう。